学部のころの研究の要旨です。
AGVの実時間走行制御に関する研究
三浦 宏和 ( 9410209 )
指導教官 : 高田 昌之
まえがき
現在の工場の生産システムは一列に並んだ作業機械とベルトコンベアによる大量一品種生産を行うフローショップ型
と呼ばれる生産システムが主流である。
これに対してジョブショップ型生産システムは、広い空間に作業機械を離して配置し、
それらの間で製品や半製品をAGV(Automatic Guided Vehicle:自動搬送台車)によって縦横に搬送することで
作業工程の変更を容易にし、多種多様な品種に対応した生産システムとなっている。
本研究はこのAGVによる製品および半製品の搬送を動的なスケジューリングにより臨機応変に行うことで、
多品種大量生産に向き、突然の障害にも強い搬送システムを構築する事を目的とする。
ブロックによるレイアウト管理・経路制御
本研究におけるAGV制御システムを構築するにあたり、高田昌之先生の開発したFA用分散並列処理支援環境Glue Logic
(参考文献[2])を用いてデータを集中管理し、そのデータの処理は分散して行うという方法を採用した。
そしてレイアウトを短い閉塞(へいそく)区間に分割し数区間をまとめてブロックとして、各々の内部の経路や走行のための
予約情報をもたせるというシステムを考案した。
ブロックは外部への接続端子の付いたブラックボックスで表し、端子間を通過する経路の情報や現在どの経路が通行可能なのか
といった情報(予約情報)を持たせる。
そしてこれらの情報を、イベント(AGVがそのブロックに走行のための予約をいれた、
あるいはある閉塞区間に故障が発生したといったような変化)に応じて更新することで、
AGVの衝突の回避やガイドライン(誘導路)の故障にも対応できるようにした。
また、ブロックを階層構造とする事で、内部の経路を探索する際の探索空間を狭めて組合せ爆発を防ぎ、
ブロックのデータ管理を容易にした。
この様にレイアウトをブロックによりモデル化したシステムを用いて、AGVの経路探索および経路変更を行うシステムを開発した。
このシステムでは、AGV制御エージェント(エージェント:主体性をもったプログラム)がブロックの情報を参照することで、
そのブロックが他のAGVによって通行不可能になっていたりガイドラインの故障で経路がなくなっていたりしたときに、
そのブロックに進入する前に別の経路を選ぶといった制御を可能にした。
また、あるAGVが退避線で対向してくるAGVとすれ違うという制御も可能とした。
図1 ブロックによるレイアウトのモデル化
あとがき
本研究の結論を以下に示す。
レイアウトをブロックとして管理し、ブロック内の経路を動的に扱う事で、ガイドラインの故障による
レイアウト情報の自動更新を可能にした。
数ブロックをまとめて上位レイヤにおける1ブロックとする階層構造をとることでブロックの管理を
しやすくし、ブロック内での経路を全探索する際に組合せ爆発を避ける事ができた。
ブロックをブラックボックスと端子で表す事で、ブロック間の接続情報を
各レイヤごとに変更できるようになった。
ブロック管理エージェントにより更新される端子間通過ルート情報によって%とゴールチェックの機能によって
AGVの走行前に目的地までの経路が存在する事を検証できることを示した。
ブロックの持つ予約管理情報によって周囲の状況を考慮した経路選択および経路変更が行える事を
示した。その例として、故障区間を避ける様子、複数のAGVがすれ違う様子を示した。
また今後の課題としては、プログラム改善による計算速度の向上や、
あるポイントに多数のAGVが集中してお互いに向き合ってしまい走行できなくなる現象の回避などがあげられる。
参考文献
[1] (社)精密工学会編, 「生産システム便覧 Handbook of Manufacturing System」,
コロナ社, 1997
[2] 月刊誌, 「インターフェース Interface」, CQ出版社, %
1997-12〜1998-3(〜1998-5掲載予定)