Research
分散制御システムの情報構造に関する研究
(Study on Information Structure for Distributed Control System)
概要:
近年の情報通信技術の発達に伴い,多種多様な機器がネットワークに接続され,情報を共有して協
調動作を行うようになり,処理される情報量は増加し続けている.処理量の増加は計算機資源の不足
を招き,通信速度の低下や処理の遅延などの問題を引き起こすことになる.常に実時間で動作し続け
る必要があり,処理の遅延が致命的な問題となる機器制御などの分野では,処理速度の低下は正常な
動作を妨げる致命的な問題となる.
一方で,機器制御で利用する情報には特有の性質がある.同じ場所で動作する機器は同じ情報を利
用しやすいといった局所性がある.また情報ごとに抽象度も様々であり,実際に物を加工する機械が
利用する情報はミリ秒単位で変化するのに対し生産計画に利用する情報は時間単位で変化するという
ように抽象度によって動作時間間隔は大きく異なる.
そこで本研究では,状況の変化に柔軟に対応できる分散制御システムを実現することを目的として,
分散制御システムに適した情報構造の設計を行った.効率よく情報共有を行うためには,関連性の深
い情報がまとめて同じサーバに配置されている必要がある.これには情報の局所性を利用することが
有効である.名前空間の分割の方法として,特定の機能に関わる情報をまとめてそれに沿って分割を
行う機能的側面からの情報分割,ある空間で動作する機器が利用する情報をまとめてそれに沿って分
割を行う空間的側面からの情報分割を提案した.これらの機器制御に用いる情報の特性を利用するこ
とで,分散制御に適した情報構造を設計でき,効率よく共有情報を複数のサーバに分散させることが
可能となった.また,分散制御システムでは共有情報間の整合性を維持すること,実時間性を維持す
ることが求められる.そのため,サーバが複数存在する場合であってもサーバ間で共有情報の整合性
が維持される仕組みを設計し,時間のかかる処理が要求された場合であってもシステム全体の実時間
性を損なわないよう並列処理が行えるように実装した.
以上により,実時間性を損なわずに状況の変化に柔軟に対応できる分散制御システムを構築できる
ようになった.
修士論文予稿:PDF
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