平成20年度 修士論文題目:「ICタグのロギング機能に関する研究」
 近年、物流・流通などの様々な分野において無線ICタグが利用されるようになってきた。なかでも、本研究では内蔵のセンサを用いた観測が可能なアクティブ型無線ICタグに着目し、このICタグを利用したロギング方法に関して研究を行う。湿度センサなどを内蔵したこのICタグを対象(建築物の梁など)に貼り付けて長期間観測し続けた後、観測結果を参照することで対象の状態変化を推測できる。このような利用方法はライフサイクルエンジニアリング目的で活用できると考えられる。しかし、無線ネットワーク環境が整備されていない環境下にて観測を行う場合、ICタグのメモリ容量には限りがあるため、常時観測した結果を記録し続けるには観測結果の数を適切に制御する必要がある。そこで本研究では、必要性が生じた場合に限り忘却しても比較的問題がないと考えられる観測結果を探して忘却するという手法を提案した。

 まず、本研究にて提案するロギング機能は観測結果を「取得・記憶する機能」と「忘却する機能」の2つの機能がそれぞれ独立して動作することによって成り立つこととした。また、複数のロギングを同時に処理できるようにするために、利用する状況に応じてICタグのユーザが適切にICタグ内部のメモリを分割できることとした。そして、分割したメモリごとに適切な忘却が可能となるような忘却アルゴリズムを考案・設計することを本研究の目的とした。

 実際にICタグを用いて観測する情報には時系列データとイベントデータとが存在し、それぞれに適した忘却方法があると考えられる。しかし、観測した情報に「重要度」を付与し、重要度が低い情報から順に忘却することで、どちらの場合でも都合よく忘却できると考えた。時系列データの場合はたとえばグラフの極値や変曲点などを描くような特徴的なデータに対して高い重要度を定め、イベントデータの場合はユーザが指定した基準に沿って重要度を定めることとした。本研究では時系列データを主な対象と捉え、情報の重要度を定めながら、賢く忘却するアルゴリズムの実装を行った。

 最後に、実装した忘却アルゴリズムの動作実験を行い、設計した忘却アルゴリズムを用いることで重要度に基づき観測結果を賢く忘却できることを確認した。加えて、忘却アルゴリズムの適用範囲を拡大し、より賢く忘却するための新たな忘却アルゴリズムに関する考察を行った。
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