高圧配電線路


高圧配電は一般に線間電圧 6600 V の三相交流で三本の線路を使って行われており、 運用上は最大 6900 V の電圧が発生する。 この最大電圧は変圧器の容量を計算する場合などにも用いられ、 定格電圧と考えてよい。

三相交流では電力を計算する時には、√3が絡んで来て、大雑把には <電力> = 1.73 × <電圧> × <電流> となる。
ここで、 <電圧>は三本の線路のうちの二本の間に掛かる電圧、 <電流>は三本の線路のうちの一本に流れる電流である。 ここではどの線路を選んでも、 それらの間の電圧やそこを流れる電流は全く同じと仮定している。

高圧配電線路は、 大抵の場合は、 電柱の一番上に三本水平に並んで実装されていると考えて良いようだ。 (参照: トップページ一番上の写真)
ところによって、 電柱の一番上に「コ」の字型の金具を取り付け、 その垂直になっている部分に縦に並んで取り付けられている場合もある。
小さくて幅の狭い「コ」の字

幅の広い「コ」の字, 避雷器つき

確かにこの方が、直交する道路に並ぶ電柱に配電線を分岐させる時には、 造作がしやすいし、出来上がりもきれいに見えるような気がする。

なお、最近では高圧配電線は電力ケーブルで敷設されることも多く、 上の写真で電柱に沿って引き下ろされているのがそれである。 地中を通す時のみならず、 電柱の間に張られたメッセンジャ・ワイヤーに、 まとわり付くようにして実装されているのも良く見かける。 写真の途中の腕金の所にコネクタのようなものがあるが、 これは電力ケーブルの終端接続端子である。
電力ケーブルでは絶縁材にかなり大きな電界がかかっており、 ただ単に被覆を剥くだけであると、 一箇所に過大な電界がかかってしまうことがあって、 そこから絶縁層が劣化するなどのいろいろな不都合が起こるらしい。 こういった不都合を避けるために、必ずこのような終端処理をして、 電界の強さが急激に変化する部位を作らないようにしてやる必要があるそうだ。

高圧引き下ろし線を使わない柱上変圧器の実装

さらに場合によっては、それら三本一組の電線同士が、 互いに棒で繋がれているかのように施設されている場合がある。 これは電気的に接続しているのではなく、 電線が風に踊って接触したり切断したりするのを防いでいるのである。
なお、配電線路はふつう被覆されており、 OE (ポリエチレン絶縁電線) か OC (架橋ポリエチレン絶縁電線) が使われる。 電力ケーブルなら CV(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル) か それを三本まとめて捻った CVT ケーブルが使われるようだ。

二重になった高圧配電線路

一部の地区の電柱では、 三本並んだ電線が二組上下に重なって、 電柱のてっぺんを占めている。 これはどうやら、 上の三本で送った電力を要所要所にある高圧開閉器で下の三本に伝えて、 事故が起こった時に停電する区域を狭くするための工夫であるようだ。

追記: と思ったのだが、これはちょっと違ったようだ。
実はこの付近に配電系統の境界があって、 その境界面をガードしているのがこれらの開閉器群だったのである。 まぁ、 サービスエリアを配電系統に区分し、 それらの間を常時開放の開閉器で繋いでおくというアイディア自体は、 『事故が起こった時に停電する区域を狭くするための工夫』であるので、 まるっきりのハズレという訳ではないのかも知れないが。 その詳細は高圧配電線の追跡で。


三相交流

さて、 何故電気を送るのに三相交流なんて使うのか、 考えてみた。 電気を送るのに、 できるだけ電線の量をケチりたいと考えたなら、 一体どうするべきなんだろうか。

電気には交流と直流がある。 我が家の中なら、 コンセントが交流で電池が直流だ。 よくあるコンセントには普通は電極が二つだけ付いていて、 ここに来ている電気は単相交流という。
たまにパソコンなどで電極が三つ付いているプラグがあったりするが、 これはアース端子が追加になっているだけで、 基本は変わらずに単相交流である。 だからそんなプラグも二極用のアダプタを付けるだけでコンセントにさせる。

三相交流は純粋に三本の線で電気を送る。 それで、送ることのできる電力はこのページの最初にも書いた、
 <三相交流の電力> = 1.73 × <電圧> × <電流>
となる。 一方の単相交流は二本の線で電気を送リ、送ることのできる電力は
 <単相交流の電力> = <電圧> × <電流>
である。

ここから電線一本あたりの電力量を計算すると、
 <電線一本あたりの三相交流の電力> = (1.73/3) × <電圧> × <電流>
 <電線一本あたりの単相交流の電力> = (1/2) × <電圧> × <電流>
となって、同じ線間電圧と線電流ならば
 (1.73/3) : (1/2) = 1.15 : 1
だから三相交流の方が単相交流より一割半ほどお得だということになる。
特に理由もなく、 もっと劇的な差があるのかと思っていたのだが、 案外つましいモノなんだと思った次第。


高圧開閉器

これは、要するに、スイッチである。 片側から来た電力を、もう片方に流したり止めたりする、あれである。 ただし、事故などによる異常な大電流が流れている最中に、 それを切り離すほどのタフさは持ち合わせていない。 回路を切る(開放する、という)ことができるのは電流が流れていない時だけである。
この高圧開閉器は、 高圧配電線の途中の分岐点とか、 配電線が障害物にぶつかるために地下に逃げたりするような時などに、 お目にかかる事ができる。

追記: 以前ここにあった記述をご覧になった専門の方から、 開閉器は定格電流程度の開放はできるとのご指摘をいただいた。 『開放できない』 というのは あくまで事故発生時などの 『異常電流』 だけということだ。
ご教示いただきましてありがとうございました。 訂正させて頂きました。 文中で失礼とは思いますが、御礼申し上げます。

高圧開閉器

上の写真では一番上の横木の下にぶら下がっている箱がそれである。 両側から電線が出ていて、ここでは片方が架空配電線に、 もう片方が電力ケーブルに繋がれて電柱に沿って地下へと続いている。
また、開閉器の上には架空配電線に繋がれた白いがいしのようなものがあるが、 これはおそらく、 落雷によるサージ電圧を逃がすためのアレスタ(避雷器)であろう。

調達品リストの傍らに 『密閉型高圧気中開閉器』の要求仕様があった。 定格電圧: 7.2kV, 定格電流: 300 または 600 A, だそうだ。
下から見上げると、底面に 300 とか 600 などと数が書いてあったが、 それが定格電流を示す数字だったのだろう。 見た所、高圧配電線が分岐するところには定格 300 A の開閉器が、 架空高圧配電線が障害物を避けるために地下ケーブルなどに乗り換えるところには 定格 600 A の開閉器を使うことが多いようだ。 しかし、あの電線にそんなに大きな電流が流れているのか。

コンパクトな開閉器

また、最近はコンパクトな開閉器も増えてきている。 上の図に示したものは左右に電力ケーブルを接続した、 普通の気中開閉器よりも遮断性能の高い開閉器であろうと思うが、 技術資料がないので仕様や詳細は不明である。 今までなんとなく (根拠無く) 真空開閉器かなぁ、と思って眺めていたが、 よくよく見てみると 『AS』 と書いてある。 となるとこれも気中開閉器である公算が大きい。 『コンパクト型』と付記された自動開閉器が調達資材リストにあったが、 それがこの開閉器なのだろうか。

幅広「コ」の字金具への高圧開閉器の実装

自動開閉器の設備された電柱

この他にも開閉器を設備した電柱にはいろいろな要素が取り付けられている。 例えば、自動開閉器の制御器 (上図一番下のカップ麺のカップを伏せたような形状のもの) や、 一番上にある、横向きに取り付けられた、太いがいしのようなもの、などである。
上図先端部分の クローズアップ

後者の目的や機能は不明なのだが、 荒畑氏によれば、自動開閉器の制御信号を高圧配電線に通させるための機器らしいとのことだ。 その仕様や構造など、詳細を是非とも知りたいものである。 また、 カップ麺のカップを伏せたような形状のものは、 自動開閉器の制御器に限らず、 ひろく柱上機器の実装に使われているようだ。

追記: JAMMIT 氏によると、上の『横向きに取り付けられた、太いがいしのようなもの』は、 『高圧結合器』と呼ばれるもので、 高圧配電線内を搬送されてきた自動開閉器への制御信号を取り出して、 開閉器に渡す機能を持つとのことだ。 要するに、『ピックアップ』なのである。
高圧結合器が良く見える ほかの電柱

もうひとつの 自動開閉器付きの電柱

何故かラーメン・カップが二つ付いている電柱

JAMMIT 氏によると、 上のラーメン・カップは開閉器の操作用で、 下のラーメン・カップは交通信号機のための電源の自動切換器であるそうだ。
交通信号機は止まってしまうと 人の命に係わるような事態をも招きかねないため、 電源は二つの系統から引き込んできて、 生きている方を適宜選択して使う様になっているようだ。 そのための電源切替器が ひとつのラーメン・カップを占有して、 電柱にくっついているのだそうだ。
しかし、 似たような形をしていても、 用途も管理者も全く違うところが 驚きであり、また興味深いところでもある。 いくら注意深く観察したとしても、 電子回路の中までは見ただけでは判らないので、 貴重な情報を提供して下さる方々に深く感謝したい。

開閉器もないのに何故かラーメン・カップが付いている電柱

JAMMIT 氏によると、 このラーメン・カップは 『短絡電流通過表示器 (SI) 』 なのだそうだ。 左右のがいしを良く見ると、 右の方が大きく、底のところからケーブルも出ている。 このひとまわり大きいがいしを 『変流器内蔵がいし (ICT) 』 と呼び、 このがいしは事故が発生した場合に流れる 異常な大電流を検出する機能を持つ。 『短絡電流通過表示器』は異常な電流が検出された時には赤いランプを点灯して、 異常区間を知らせる事ができる。

こういった自動開閉器の要素も調達品リストに名前を連ねている。 まず、架空用の『自動真空開閉器』には、 『DC 形』というのと『時限式事故捜査器用』というのがあるらしい。

『自動真空開閉器 (DC 形)』には 『短絡電流通過表示器』, 『変流器内蔵がいし』, 『低圧電源自動切替開閉装置』などといったオプションがあるようだ。 そして『自動開閉器用高圧結合器』という機器が出てくるが、 台数から見てこれは必須のユニットらしい。 これに比べると、 先に挙げたオプションの調達数は、 本体の数の一割にも満たない。
JAMMIT 氏によれば、 電柱の一番上にある、 がいしを横にしたような形状のものが 高圧結合器であるとのことだ。 この資材の調達数が一番多かったので、 そしてこれとほぼ同数を必要とするその他の調達資材がリード線ばかりだったので、 これが開閉器本体かと考えたのだが、 そうではなかった様だ。 ただ、 可能性として、 『自動開閉器用高圧結合器』の計数単位が『組』になっているので、 開閉器本体と 制御信号の高圧線路への結合器とで ひと組になっていることも考えられる。 また、そうとでも考えないと、開閉器本体を調達しないことになってしまうのだ。

一方の『自動真空開閉器 (時限式事故捜査器用)』は、 名前からはどのようなものかは見当が付かないが、 特記仕様の所に『都市形自動開閉器用高圧結合器』などと書いてある所を見ると、 名前からして将来のホープの様だ。 JAMMIT 氏の『東京電力の電柱』の page でも最初に出てきていることから、 きっと注目すべき存在なのだろうと考えてしまう。 最近、東芝が中国に技術供与をすることになったというニュースもあった。 対事故性が非常に高いとか、そんな機能でもあるのではないか。わくわく。

この他に『自動開閉器用(コンパクト型)』の『遠隔制御器<配電線搬送用>』には 『F2』, 『F4』, 『F6』, 『F8』, の四種類があるようで、 これらを合計した数が『DC 形』と『時限式事故捜査器』との合計数にほぼ等しい。 そして、この数とほぼ同数だけ、 『遠方制御器用コネクタ付きリード(電源用)』, 『遠方制御器用コネクタ付きリード(搬送用)』, 『遠方制御器用コネクタ付きリード(開閉器用)』 が必要とされている。
ここから想像するに、 4 種類ある『遠方制御器』のひとつを三種類のリード線各一本で 『DC 形』の『自動開閉器用高圧結合器』か あるいは『時限式事故捜査器』と接続するのだろう。
自動開閉器の制御器の底面のラベルをなかなか読みとれないので、 上に挙げた三種類のリード線が本当に付いているのかは確認できていない。 しかし、『遠方制御器用コネクタ付きリード(搬送用)』か…。 この線はきっと制御信号の搬送用なのだろう。 そして、『<配電線搬送用>』なのだから、通信路として配電線を使うのだ。 すると、ただ電源の入り切りを検出して動作する自動開閉器とは、 一味違うということなのだろう。
4 種類の制御器にはどのような差があるのか興味深々である。 電流容量のような量的な違いはおそらく無いだろうから、 質的な違いであると期待したい。 すなわち、何処まで自動でやってくれるのか、 などといった機能上の違いである。

追記: ご専門の方から、 『遠隔制御器<配電線搬送用>』の 『F2』, 『F4』, 『F6』, 『F8』などは、 遠隔制御用の搬送波の周波数を示すものであるとのご指摘を受けた。 制御所ごとに搬送波を変えることにより、 他の制御所の管理下にある開閉器が反応しないようにしているのだそうだ。 F1 から F10 迄の 10 種類が存在するが、 通常使われているのは上記の四種類だけとのこと。


高圧配電線の保護

高圧配電線路は、 常に地絡 (地面とショートすること) や 短絡 (異なった相の配電線同士がショートすること) の 危機に曝されている。 このような事故が起こった時に、 高圧配電線路内の自動開閉器は、 配電用変電所の過電流遮断器と共同して、 電源供給を停止して安全を保つとともに、 暫くしてから再閉路 (変電所からの電源供給を再開すること) を行ない、 事故が発生した場所の直前までの配電を自動的に復旧することができる。

まず始めに、 配電線路内の幾種類かの『スイッチ』について 触れておかなければならない。 電力工学では『スイッチ』の類を総称して『開閉器』と呼ぶ。 開閉器を閉じて電流が流れる状態にすることを『投入』、 その逆に電流が流れない状態にすることを『開放』と呼ぶ。
電流を流さなくするために、 開閉器内部で接触していた二つの金属電極を引き離すと、 多かれ少なかれ それらの金属電極の間で放電が起こり、 その熱で電極の金属が融けてガスになって 「アーク」と呼ばれる電流を流しやすい部分を作ってしまう。 (電気を使った溶接器で、 もの凄く明るく光り輝いている部分がこのアークである。) 電流はアークを通って金属電極同士の間を流れることができるので、 この電流が金属を融かしてガスにする熱を継続して供給し、 結局金属電極は引き離されたのに 電流だけは流れ続けるという現象が起こる。
開閉器は、 このアークをできるだけ速やかに消し去って、 どのくらい大きな電流を開閉することができるかによって、 以下のように分類され、それぞれに異なった名前が付けられている。

遮断器
開閉器の中では一番強力である。 たとえば短絡事故が起こった時には、 線路に平常時の数十倍以上の大電流が流れることすらあるが、 そんな時でも安全に投入・開放することができる。 タフなだけに、構造が複雑だったり、大きかったり、高価だったりする。
負荷開閉器
短絡事故などの時のような大電流は開閉できないが、 地絡電流や平常時に流れる電流くらいは開閉できる。 ちなみに、配電系統の場合、地絡電流というのは負荷電流とほとんど変わらないのだそうだ。
断路器
電流が流れている時には、正常時であっても回路の開閉はできない。 電流が流れていないといっても、 電圧だけは掛かっている可能性はあるので、 これを安全に開閉できる構造を持っていなければならない。 ただし、 モノによっては断路器であっても、 ちょっとした電流なら開放できる。
またここでは触れないが、 我々に馴染み深い「ヒューズ」も開閉器の一種である。 これらをうまく組み合わせて配電線路を保護する必要があるわけだ。

さて、配電線路を全て遮断器だけで保護することができると、 事故が起こった時にはその付近だけを停電させるだけで済むので、 非常に有難い。 しかし、 その反面、 大きな遮断器があちこちに配置されることになり、 設備やその保守が大変で コストも掛かってしまうだろう。
そこで、 配電用変電所の出口にのみ遮断器を置いて 大きな電流が流れた時に開放するような仕掛け (これがまた面白い/いずれ改めて) を置き、 配電線路の中には負荷開閉器 (あるいは断路器) だけを配置して配電線路を構成する。 このようにすると、 電柱に取り付けられた開閉器は 変電所の遮断器が開放するまでの時間 (長くても 1 〜 2 秒程度) だけ、 その大電流に耐えることさえできれば、 大電流を遮断できる能力は持たなくても済む。 そして、 事故が起こって大電流が流れた時には、 変電所の遮断器が動作してその系統全ての配電を一旦止め、 事故点の一つ手前の区間までの開閉器をもう一度投入することで、 事故と関係の無い需要家に配電を再開することができる。

このようにして配電が止まった時、 昔は一旦全ての開閉器を人手によって開放してから、 変電所の遮断器を投入し (これを『再閉路』と呼ぶ) 、 また人手にたよって変電所に近い開閉器から順に投入していったらしい。 これではたまらない、というので、 自動開閉器が考案されたのだろう。

自動開閉器の動作の基本は、 配電線の事故が発生した時に、 配電用変電所出口の遮断器の再閉路動作と協調して 開閉器を変電所に近いものから順に自動で投入しておきながら、 一方事故を起こした区間だけは 投入しないままに残しておくことだ。 この方式には、 時限協調による順送式と、 有線あるいは配電線搬送による通信を使った信号方式との 二つがある。
まず最初に事故が発生した時には、 配電用変電所の遮断器が開放される。 こうして配電線の電圧が無くなってから、 その系統の全ての自動開閉器が一旦開放される。 そして遮断器の開放から 1 分ぐらい経った後で、 変電所から配電を再開 (再閉路) する。

時限協調による順送式では、 開閉器の片側に電源が投入されてから 暫く ( 7 秒程度) 待ってから開閉器を投入する。 この時、 もし自分が投入した直後 (普通は 5 秒程度以内) に また配電用変電所の遮断器が開放されるようであれば、 それは自分のすぐ先の区間に事故を起こした点がある ということを意味しているので、 それ以降は手動でなければ投入できないように 自動開閉器の内部の状態を切替えて次の再閉路に備える、 という動作をする。
そのおかげで、二回目の再閉路では、 また変電所から順に 7 秒程度ずつ遅れて開閉器が投入されていき、 事故点の直前の開閉器だけは自動で投入されないままに放置されて、 人手による事故の復旧を待つことになる。
この説明でも判る通り、 事故点のすぐ配電用変電所側の開閉器では、 その開閉器が投入された瞬間に 短絡電流クラスの大電流が一気に流れ込む可能性があるので、 その接点はそのくらいの電流の衝撃には 耐えることができなければいけない。 結構タフでなければならないのだそうだ。
さて、事故の復旧作業が完了すると、 そのすぐ変電所側の自動開閉器だけを手動で投入する。 すると、そこからまた順に 7 秒程度の間隔で開閉器が自動で投入されていき、 最終的には系統全部に配電が行なわれるようになる。 (この過程を夜景として見ることができれば、かなり印象的だろう。)

この時、二回目の再閉路でも数秒ずつ待ちながら順番に投入していくので かなり復旧に時間がかかってしまう。 これを一気に投入してしまおうというのが信号方式のようである。 この方式では、 すでにトラブルのある区間は何処だか判っているので、 制御信号を送ることによって その区間の直前まで一気に投入してしまえるのである。


高圧配電線の電線

さて、あの一番てっぺんの三本の電線にはかなり大きな電流が流れているようなので、 一体どんな電線を使っているのか、少し気になったので、あがいてみた。

高圧配電線は OE(ポリエチレン絶縁電線)銅線か OC(架橋ポリエチレン絶縁電線)銅線だろうと見当をつけて、 調達品リストを見てみる。
なるほど、あるある。 OE 銅線は 5.0 mm2 (平方ミリメートル) と 60 mm2 の二種類が、 OC 銅線は 150 mm2 がリストにある。
ところが、ちょっとはなれた所に配電用アルミ線のリストも発見する。 配電用の電線は銅線だけではなかったようである。 ACSR-OE 電線は 32 mm2 と 120 mm2 とがある。 この ACSR 電線というのは、中心に亜鉛めっき鋼線を撚り合わせ、 その周囲にアルミ線を巻いて撚った電線で、 アルミは電気伝導率が悪いので普通の電線より太くしなければならないが、 アルミが軽い分だけ電線そのものの重さを軽くする事ができるという優れモノである。
その中心の亜鉛めっき鋼線が錆びそうな所で使う、 亜鉛めっきの芯線の代わりにアルミ覆鋼線を使った ACSR/AC-OE 電線も、 32 mm2 と 120 mm2 とがリストされている。

他にも HAI-OC 電線という種類で、断面積 240 mm2 という電線がある。 しかし、 HAI とは何だろうか?? OC 被覆だから高圧配電用だと思うのだが、 また調べなければいけないものが増えてしまった。

追記: JAMMIT 氏によれば、アルミ導体の高圧大容量ケーブルで、 最大が 240 mm2 (銅導体だと最大 150 mm2)であるとのこと。 また、 SN-HAI-OC というのもあって、 最初の SN は線に突起を付けて雪が付き難くした難着雪電線を意味する。

これらの電線の直径を単純に円の面積として考えて計算すると、 断面積 5.0 mm2 では直径は 2.5 mm, 32 mm2 では直径が 6.4 mm だから、 ちょっと細すぎてそれらしくない。 断面積 60 mm2 は径 8.7 mm, 120 mm2 で径は 12.4 mm, 150 mm2 では径は 13.8 mm, 240 mm2 だと径は 17.5 mm だから、 きっとこのくらいの電線を使っているのだろう。 高圧配電線用のがいしの図面を見ても、絶縁被覆を含めた電線の外径は、 20 mm 程度のものを想定しているように見える。

十年後の追記: ある方から情報を戴いて、 このページを初めて公開 (確か1999年だったと思う) してからおよそ十年経って、 久しぶりに調達計画リストを見てみた。
戴いた情報によれば、 『 単線の電線の呼びは直径の mm 表示、 より線の電線の呼びは断面積の mm2 表示 』 ということなのだが、 確かに電線の規格には mm と mm2 とが 混在しているようだ。 mm 表示のものの最大は 3.2 で、 mm2 表示の最小は 8 だが、 直径 3.2 mm の円の面積はおよそ 8.0 mm2 なので、 ここがおよその境目になっているのだろう。
おそらく初めてこのページを公開した頃もこうなっていたのだろうけれど、 私はすべて mm2 表示だと思い込んでいたようだ。 ついでに導体直径の計算間違えも十年間世間に曝した後に発覚。 いやはや、なんともお恥ずかしい。
しかし、 調達品リストも様変わりしているようだ。
まず、『銅線』という名前が見当たらない。 ほとんどアルミ電線に換わってしまったのだろうか。 あるいは CVT ケーブルに換わってしまったのか。 しかし、 6000 ボルトの CVT ケーブルに 500 mm2 というのがある。 より線であることも考え合わせると、 導体直径が 25 mm 以上となるからなかなか強烈。 あ、そういえば昔もフィーダーのところにはそんなのを使っていたか。

OC 硬銅線の許容電流は最高許容温度 90 度で 60 mm2 なら 280 A 前後, 100 mm2 なら 390 A 前後だそうだ。 残念なことに OE 銅線の 60 mm2 や OC 銅線の 120 mm2 といった まさに欲しい値は手持ちの資料では見つからなかった。 それじゃこの数字に何の意味があるのかということにもなるけれど、 まぁ、大体の感じだけ押えたということにしておこう。 だって、 OC 銅線の 120 mm2 での許容電流は 400 A 以下ではないだろうし、 もしも 500 A 以上だったら、 やっぱり驚かなければいけないだろうから。
さらに、これまた ACSR-OE 電線のデータはないのだが、 ACSR-OC 電線だったら 32 mm2 で 145 A, 120 mm2 で 305 A だそうだ。 でも、 OC 被覆と OE 被覆とでは、どちらがどのくらい電流を多く流せるのかが、 やっぱり、全然判らない。 許容最高温度が OC では 90 度, OE では 75 度なのだそうで、 OC の方がたくさん電流を流せるのは確かだと思うのだが。

これらの許容電流というのは平常時の場合であって、 短絡などの事故が起こった時には、 配電用変電所出口の遮断器が開放するまでの 1 〜 2 秒間だけで良いから、 通常の何十倍もの電流を流しても切れたりしないことが必要となる。 そんな場合には、 その電流で電線は熱く加熱され、 雨粒ぐらいはあっという間に蒸発してしまうような状態になるのだろう。

ところで、調達品リストには OE 銅線は 1000 km, OC 銅線は 640 km と書いてある。 ACSR-OE 線に至っては 32 mm2 が 3200 km, 120 mm2 では 4700km も! 毎年こんなに電線を使うものなのか。 高圧配電の電圧を 20 kV 級 (22 kV または 33kV) にしようという動きがあるそうだが、 それも無理もなさそうだ。

で、その調達品のリストによると、 SV という被覆の銅導体の電線があって、 銅線の中では OE や OC よりもたくさん使われているようなのだが、 どのような所に使うのだろうか。 細い方 (2 mm2) からかなり太いもの (150 mm2) まで、 それも (おそらくは) 2 導体や 3 導体で使っているようだ。 きっと配電用だと思うのだが…。

追記: JAMMIT 氏によれば、 SV とは低圧本線や変圧器二次側の引き上げ、 引き込み線などに使う 赤・白・黒の撚りケーブルで、 各線は OW に準ずるものだとのこと。 OW に比べて、周囲の木や建物との間隔を狭めることができるのだそうだ。
しかし、そうか、低圧配電用であったか…。 いずれ低圧配電線路の page に引っ越さなければなるまい。
追記 2: 電気工学ハンドブックをめくっていたら、 一部の電力会社で SV と呼んでいるものは、 VV と同じ構造を持ったものをいう、という記述を見つけた。 VV は、被覆電線を 2 〜 4 条、 撚りあわせるか平行にするかして、 ビニールで覆ったものである。

ついでに、高圧配電線から変圧器に引き下ろす線も見てみよう。 聞いたところによると 5.5 スケアーの PD 線というものを使うそうだ。 PD 線というのがどういうものかはよく判らないけれど、 恐らく手持ちのカタログ中で PDC とか PDP と呼ばれているものの総称だろう。 これらについてはカタログには許容電流の標記がないので困りものだが、 電気工学ハンドブックによると公称断面積 5.5 mm2 の銅より線では 30A 程度は流せるようである。
ここから単純に、 この線三本で流せる三相交流の電力量を計算してみると 340 kVA ほどとなる。 これなら、 変圧器一台に給電する範囲であれば、 まず足りなくなることは無さそうである。

また、このページの先頭の方の写真にも示したように、 高圧引き下ろし線のかわりにケーブルで実装するケースも多いようだ。 単芯の CV ケーブルなら一番細い公称断面積 8 mm2 のケーブルの場合でも その許容電流は 78A にもなるので、 変圧器の最大容量は 890 kVA になる。 結構凄い。
ということで、次はケーブルの話題。


高圧配電ケーブルの接続

最近造成された住宅地などでは、 配電線が電線ではなくケーブルによって施設されているところが増えてきた。 電線が三本並んで走っているところでは、 新たな柱上変圧器を追加したいと思った時には、 すぐ上の高圧配電線の被覆を剥してコネクタを使って電流を引き込めば良い。 ところが高圧配電ケーブルを使っているところとなると、そうはいかない。
ケーブルは両端にコネクタがついていて、そこまでが一つの単位である。 勝手に途中で切って使う訳にはいかない。 そこで、要所要所でケーブルを繋いだり、 分岐させたりするためのからくりが必要になってくる。

高圧架空ケーブルから柱上変圧器への引き込み

という訳で、上図がそのためのカラクリである。 調達品リストにあった『高圧架空ケーブル用接続体』がおそらくそうであろう。 三方向から T 字型にコネクタが繋がれていて、それが三つ並んでいる。 各コネクタに道路側から順に、白, 赤, 青 の順になっている。 上の写真では、電灯用の柱上変圧器に給電しているので、 下側から接続している線は二本しかない。
ところで、調達品リストには『高圧架空ケーブル用接続体』という物品の特記仕様として、 『 T 形』, 『パイ 150-8 形』, 『バイ 150-150 形』 の三つがあり、 そのすぐ次に『差込形屋外耐塩用終端接続部』という物品で 『100mm2 用』という特記仕様のモノが並んでいる。 写真にあるのは三本のケーブルが集まってきているので『 T 形』だろう。 『パイ』というのはおそらく『π』のことで、 左右から各一本と下から二本のケーブルが集まってきているところだ。 その次の数字は導体の断面積か何かだろう。 その次の『バイ』というのは、ちょっと理解に苦しむが、 これはこの調達品リストを人間が作った証拠ではないだろうか。 いや、もちろん『バイ』は『 2 』という意味の接頭辞でもあるから ひょっとしたらそれかも知れないが、 そうなると今度は『パイ』の立場が…。 (^_^)

その次にリストに書かれた、 『差込形屋外耐塩用終端接続部』であるが、 これをどう解釈するか悩んでしまう。 まず、これは一般のケーブルヘッドにも使われる言葉であり、 先ほどのこの写真にも写っているケーブルヘッドの事も 意味するのだ。 だから、これはそういうものを意味しているのだと解釈したら、それはそれでおしまい。
もしもこれが、『高圧架空ケーブル用接続体』と強く関連していると考えれば、 きっと上の写真にあるような金属性コネクタを意味していると解釈できる。 その場合の問題は『終端』という言葉で、 これを何の終端と見るかで現すモノが違ってくると思うのだ。 これが『ケーブル』の終端なら、全てのコネクタを指すことになる。 一方『高圧配電線路』の終端を指すなら、 それは、上の写真の白の相の下からのコネクタのように、 使っていないコネクタの受け口を塞ぐための専用部品と考えられるのである。 で、 私にはなんとなく (理由無く) 前者が正しいような気もするが、 どちらが正解かは判らない。残念なことに。
さて、少し前に数字は断面積だろうと書いた直後に、ちょっと困ったことになった。 『差込形屋外耐塩用終端接続部』の特記仕様は『100mm2 用』なのだ。 こちらには単位が付いているので、断面積であるのは明らかである。 では、さっきの 150 や 8 は何なんだろう。 電力ケーブルの太さにはいくつかの良く使われる太さがあって、 これは恐らくそういう規格に従っているものなのだと思う。 で、良く使われるケーブルの太さは断面積 (単位 mm2) で、
22, 60, 150, 250, 325, 400, 500, 600, …
となっているのだ。だから、 150 という数字はケーブルの断面積だと思いたいのだが、 じゃぁ、『差込形屋外耐塩用終端接続部』の特記仕様の『100mm2 用』は 一体何の面積なのか。判らない…。

調達品リストのすぐ次には、 『大容量高圧架空ケーブル用接続体』という物品が三つ並び、 特記仕様がそれぞれ 『 T 形』, 『パイ 250-8 形』, 『バイ 250-250 形』 となっている。 その次は『大容量高圧架空ケーブル用差込形屋外』で、 どうにも中途半端な感じがする終り方だ。 ここにも『バイ』があるし、 この web page を作っていた人もちょっと疲れが出ていたのだろう。 実に人間臭い page に仕上がっている。
そして、特記仕様としては『200mm2 用』となっている。 やはりこの面積は何の面積なのか謎だ。

追記: JAMMIT 氏によれば、 高圧配電用架空ケーブル CVT は 60, 100, 150 mm2 の三種類、 大容量高圧配電用架空ケーブル HCVT は 200 mm2 の一種類、なのだそうだ。 ということは、地中用と架空用では同じ 6 kV 用 CVT ケーブルでも、 異なった規格になっているという事なのだろう。 これで、『差込形屋外耐塩用終端接続部』の特記仕様の謎は解けたのだが、 今度は『パイ 250-8 形』 の 250 の立場がなくなってしまった。 一瞬、許容電流かとも思ったが、今の 600 A 大容量配電の時代にそれもないだろう。 では一体何なのか。

大容量? 高圧架空ケーブルの分岐
という訳で、もっと太い線もあるようなので探してみたら意外と身近に見つけた。 しかし、先ほどのケーブルと並べてみた訳ではないので、 本当にこちらの方がケーブルが太くなっているのか、 については少し疑問が残る。
この接続体は下から二つのコネクタが入ってくる『パイ 形』であり、 左右から来るコネクタと同じ太さのケーブルを使っているようなので、 『パイ 250-250 形』あるいは『パイ 150-150 形』なのだろう。 その割には下向きのコネクタのうち左の一列しか使っておらず、 右側一列は全て遊んでしまっている。 そのうち新しいケーブルが来る予定でもあるのだろうか。


避雷器


横木の上にくっついている、 電線の生えたソフト・クリームのようなものが避雷器である。 生えている電線は高圧配電線に繋ぐ。 実は底からも細い電線が生えていて、これは接地するようだ。 この避雷器は、雷による大きな電圧を、 需要家の所まで届かせる前に地面に放電してしまう働きを持っている。
しかし実際問題として、高圧送電線を支える巨大な鉄塔ならともかく、 町中の配電線などに雷が落ちる事はあまり無いそうである。 では何でこんなに律義に避雷器を取り付けるかというと、 世の中には落ちて来ない雷というものがあって、 それを避けるために必要なのだそうだ。 で、 こんな雷を『誘導雷』という。

雷雲ができてその中に電荷が溜ってくると、 雷雲に向きあっている地面の表面には雷雲と逆の電荷が集まり溜っていく。 その時、電柱のてっぺんにある高圧配電線は、 少しでも雷雲に近寄りたい地面側の電荷にとっては、 最高のポジションとなる。
地面側の電荷が高圧配電線に溜りに溜った所で、 落雷が起こって雷雲に溜った電荷がどこかに放電してしまうと 一体どうなるだろうか。 高圧配電線に溜った電荷にとっては そこに引き留められる 原動力が無くなってしまう訳だから、 当然 一気にどこかに 逃げ出そうとすることになる。 こんな電荷の動きが 落雷と同じ働きをする訳で、 そんな連中が大挙して 我が家のコンセントなどに押し寄せて貰っては困るのだ。
そんな訳で、避雷器はどこにでも、まめに姿を現しているそうだ。 なるほど、納得。


未解決問題

  1. 自動開閉器のシステムの詳細と実装

    私がどうも納得できないのは、 『時限式事故捜査器用の開閉器は、 信号式ではないのだから、 搬送用の高圧結合器が必要ないのでは?』ということ。 なのに、なんで『自動真空開閉器 (時限式事故捜査器用)』の 特記仕様の所に『都市形自動開閉器用高圧結合器』などと書いてあるのか。
    一回目の再閉路では時限式で動作して、二回目の再閉路では信号を使うということか。 でも、それなら、全ての自動開閉器は『時限式』であるはずなので、 わざわざ『(時限式事故捜査器用)』なんてただし書きを付ける理由が判らない。
    しかし、こういうところが推理ゲームみたいで面白い。

  2. 高圧配電線路の配電用変電所側の取り付き

    フィーダの変電所側は見てきた。 問題はフィーダの需要家側だ。 一体何処にあるのか。 どうやって探せば良いのか。

    追記: とりあえず、力任せに探してみた。 高圧配電線の追跡 をご覧頂きたい。

  3. 各種高圧配電用電線の最大許容電流

    日本電線工業会規格で計算式が規定されているのだそうだ。 とはいえ、その計算式だけをちょっと知りたい場合、どこで調べれば良いのか? 図書館あたりで探せるのか? 配電系の設計者が概算時に使うような、 ザックリした値がありそうな気がするのだが。

    追記: 電線やケーブルの許容電流は、 その使用環境に大きく影響を受けるが、 良くありそうなケースでの値というものは考えることができる。 電線やケーブルの便覧を入手できたので中を見ていたら、 そんな値を見つけることができた。 データブック をご覧頂きたい。


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