低圧配電線路


低圧電灯線用柱上変圧器の実装

低圧配電線路は、電柱の上にある柱上変圧器を使って、 高圧配電線路から受けた電力を 100 または 200 V の単相または三相に落している。 最近の住宅地の中では、おそらく単相三線式 200 V (東京電力が言うところの交流単相 3 線式標準電圧 100 ボルトおよび 200 ボルト, ただし標準電圧 100 ボルトというのは定格電圧 105V で 実際の供給電圧は 101±6V だそうだ) だろう。
電柱のてっぺんに居座った高圧配電線路の三本のすぐ下くらいに、 電柱に直接取り付けられた縦に三本並んだ電線があれば、おそらくそれ。 普通は OW 電線と呼ばれる、ビニルで被覆された電線が使われている。 被覆の色には黒と青とがあるが、 黒は銅導体、青は ACSR 導体の目印なのだそうだ。
また、電柱からはなれた所にある路地に配電線路を引き込みたい時には、 スペーサを使って引き込みを行なう。

スペーサを使った引き込みの例: その 1その 2

この 3 本に引き込み線などを繋ぐ時には、 上の写真でも判るように、 その線の色を上から、白,赤,黒の順に繋ぐようである。

低圧電灯線の切れ目

電柱の所で、 三本のうちの下の二本は途切れているのに、 一番上だけは繋がったままになっているような所があった。 してみると、 白は接地線なのだろう。
そういえば、 大学の実験用配電盤から電力を引き出すテーブルタップを作る時には、 接地極は緑, 電源の接地側 (コンセントの穴が長い方) が白, 残った線 (今私の研究室で使っているコードでは黒) を電圧側とするのがお約束だ。 買ってきたタップのパッケージにまで、 そのように配線するよう指示が書いてある。 これは電信柱の上でのお話と全く同じだ。 接地線が白、 というのは どこでも共通した大原則なのだろう。

なお、大規模な団地やマンションなどでは柱上変圧器を使わず、 高圧配電線路を直接引き込んで変圧している場合もあるようだ。 そのような場合には、 電力会社が建物の中に機械室を一室借りて、 そこに変圧器などを設置させてもらう、という形をとるらしい。
どのくらいの大きさの部屋を用意するのかよく判らないが、 ドアを開けたら部屋の真ん中に柱上変圧器が三台くらい、 並べて置いてあったりするのだろうか。


低圧動力線

低圧動力線用柱上変圧器の実装

高圧配電線のすぐ下くらいに、 縦に三本並んでいるのが低圧配電線だと書いたが、 邪魔な線があると感じた方もおられるだろう。 本当は低圧配電線には二種類ある。 一つが低圧電灯線, もう一つが低圧動力線である。 今まで低圧配電線と書いてきたのは、 実はこの低圧電灯線の事だ。
今回新しく出てきた低圧動力線というのは、 モータなどを回すために便利なように、 三相 200 V (東京電力が言うところの交流 3 相 3 線式標準電圧 200 ボルト, ただし定格電圧は 210V で実際の供給電圧は 202±20V) になっている。 この三相交流は回転磁界を作りやすいため、 誘導電動機などに使われている。
需要家が電力会社と交わした契約が低圧電力契約だと、 この低圧動力線から電力が供給されることになる。 裏を返すと、 低圧電力契約を結んでいる需要家がそばに居ない場合には、 低圧動力線は配線されない可能性がある。 一般の住宅が並ぶ住宅地などの電柱には、 低圧動力線はあまり見かけないことだろう。

低圧動力線は、 高圧配電線と低圧電灯線の間に配線される、 水平に並んだ二本の電線である。
と、ここまで読んで、不思議に思った人、手を挙げて。

そう、低圧動力線は三相交流なのに電線が二本しかないのである。 あとの一本はどうするのか。
地面(すなわち地球)にお願いする? それは少し恐い話だ。 無理ではないだろうけれど、 ちょっとその手は使いたくない。

このすぐ上の写真を御覧頂きたいのだが、 この電柱の右側にのみ、低圧動力線が張ってある。 そして、二台の柱上変圧器から取り出した三本の電線が、 二本の低圧動力線と一番上の低圧電灯線に繋がっている。 そう、低圧電灯線の三本のうちの一本を拝借して、 これを含めた三本で三相交流を送っている訳だ。
この写真でも良く判るだろう。

いや、実をいうと、私もこの写真を見て、初めて納得した。 頭で考えて、 きっと低圧電灯線のうちのどれかを使っているんだろう、 と予想はできていても、 自分の目で見て確認しないことには、なかなか納得はできないものである。
また、 低圧動力線に feed する時にも、 低圧電灯線の一番上の線には白い線を繋ぐものらしい。 また、 低圧電灯線の一番上の線は接地線でもあるので、 電灯線と動力線とで共有するにもふさわしい線だ。
残り二本は良く判らないが、なんとなく道路側に赤を置くことが多いようだ。 しかし、これは、動力線が道路を跨いでいるような所でも見つけない限り、 確認できそうもない。

低圧配電線路に巨大な「コ」の字金具を使った場合は 上に示したように全ての低圧配電線を縦に並べてしまうようだが、 そこまで大きくない「コ」の字金具を使った場合は、 電灯線は縦並び、 動力線は横並び、 に拘るようだ。 特に下の写真の電柱では、 動力線だけを分岐させている。 その時には電灯線の一番上の線も一緒に分岐させている。 これは、 この 3 本で低圧動力線路を構成しているという何よりの証拠だろう。
「コ」の字金具を使った低圧動力線の実装

三相交流の電圧を変える時には、 普通は二台以上の変圧器が要る。 というか、 普通の変圧器というのは一次側(入力側)の電線が二本しかないのだ。 このため、 三本のうち一本だけは両方の変圧器に繋ぐことになる。
二次側も同様だ。 低圧動力線の最初の写真に示した柱上変圧器の 後ろ姿 を見てみると、 それぞれの変圧器のセンター・タップは使われておらず、 各変圧器の電柱寄りの端子は まとめられていることも判る。
本当は三台使って、 変圧器で三角形を作るようにする方が電力を無駄なく利用できるのだが、 二台で済ませることができる場合にはそうしてしまっているのだろう。 なお、あまり見かけないが、一つの箱の中にトランスが複数個入った、 三相柱上変圧器というものも存在する。 こいつの入力側の電線は当然三本ある筈だ。 この間、車からちらっとそんな変圧器を見かけたのだが、まだ確認していない。

追記: その変圧器がこれである。確かに一次側の電線もカットアウトも三つある。

やけにスマートな印象がある。 中に変圧器が三つ、縦に積み重ねられているのだろうか。 それとも V 結線されたトランス 2 台で構成されているのだろうか。

一方、低圧電灯線は単相なので、変圧器は一つで済む。 そのため、高圧配電線から引き下ろしてくる配線も二本だけである。 このため、高圧配電線路の末端の方では、 三本のうち一本が省略されていることもある。

ところで、複数 (というか、今のところ全て) の参考書に 『日本では灯動共用三相 4 線式が最も普及している』と書いてあった。 この「灯動共用三相 4 線式」とは、三相交流の 3 本の電線 (例えば R, S, T) に、 その内の 2 本の電線 (例えば R, S) 間の 200 V を ちょうど二つに分けた線 (これを X としよう) を加えて、 R, S, T で三相 200 V を、R, X, S で単相 100/200 V を供給しようとするものだ。
でも、実際に電柱を見てみると、電線は 5 本張ってある。 また、上記の「灯動共用三相 4 線式」を採用すると仮定した場合、 電灯線を優先して X を接地線にすると、 動力線の 3 本はどれも接地できなくなってしまう。 また、 動力線を優先して R を接地するとすると、 単相 100 V として使えるのは R-X 間だけで、 X-S 間はどちらも接地されていないので利用し難くなり、 結局電源の利用バランスが崩れてしまう。
接地の目的が、 「電源と地面との間の電圧が大きくなり過ぎない事」 だけであるなら問題は少ないのかも知れない。 しかし、 電灯線でも動力線でも、 どれかの線が接地されていて欲しいと思うのは贅沢なのだろうか。

まぁ、 こんな風に、 「灯動共用三相 4 線式」も良い事ばかりではないような気がするし、 とにもかくにも私の身の回りは「灯動共用三相 5 線式」になっている。 私の身の回りだけ、世の中から懸け離れた特殊環境なのだろうか。 しかし、上記のような記述がある書籍であっても、 電柱上の機器の解説図には きまって低圧配電線が、 横 2 本と縦 3 本、全部で 5 本書いてあったりするのだ。 不統一も甚だしい。 摩可不思議。 真実はいずこに。


配電用変圧器

さて、 電柱の絵には付きものの、 柱上変圧器である。 東京電力の調達品リストを見てみると、 『配電用変圧器』という項目があって、 そこで数量が一番多いのは 『6000V 耐雷型変圧器 (ハンガーバンド方式) 単相 50kVA』 である。 なんとなく括弧の中に 「電柱に括り付けるんだぞっ」 という決意が読みとれるようだ。
付近の web page には、 『6kV 耐雷型柱上変圧器』のおおよその要求仕様も記載されている。 定格電圧: 6600/210-105V, 定格容量: 単相 10, 20, 30, 50, 75, 100 kVA, タップ電圧: 6750, 6600, 6450, 6300, 6150、 だそうだ。 何となく、タップが低圧側に三つもあるという事実が、 遠くまで電力を輸送する苦労を雄弁に物語っているような気がする。 このタップ間隔は 100 V まで落した時には 2 V 強に相当するので、 二次側定格電圧が 105 V である事も手伝って、 これなら 101 ± 6 V に楽に収められそうだ。

さて、道端で見かけた変圧器に 50 とか書いてもあったので、 一番調達する数が多いという 50 kVA の変圧器を例にとって考えてみた。 仮に家一軒の電力需要が 4 kVA だとすると 12 軒分になるが、 これで足りるのだろうか。 二次側電流が 250 A 近くになってしまうから、 しょうがないのかもしれない。 400 V 配電に移行したくなるのも当然の事か。
で、この変圧器の一次側電流が 7.5 A だから、 さっきの高圧気中開閉器には、 この変圧器を 40 台とか 80 台まで繋ぐ事ができる訳だ。

巨大な柱上変圧器

一番左側からの 別アングル, もう一つ少し左側からの 別アングル, 少しはなれた 別アングル

以前からサイズが大きくて気になっていた、 50 と 125 と書かれた柱上変圧器である。 一次側ケーブルは 3 本あり、 右から U, V, W と名前がふられている。 これらは三相交流の各相の名前 ( R,S,T あるいは U,V,W を使うらしい ) と同じで、 如何にもそれらしい。 二次側はケーブルが 4 本出ている。 ケーブルの太さは 左の二本が太く 右の二本が幾分細い。 これら四本のケーブルには それぞれ色テープが巻かれているようで、 左から順に赤, 黒, 青, 黄色あるいは白 (写真では良く判らない) の順になっている。 赤と黒が太い事から、 これら二本が電灯線であろう事が推測される。 大原則に従うのなら白は接地線であろうと思うが、 何故これがこんなに細い線で良いのかは良く判らない。 接地してあるからといって、 そこを流れる電流量が少ないとは限らないと思うのだが。 残った青は、動力線の一本だろう。 この線が細くて良いというのは、 動力の需要が比較的少ないと仮定すれば、 判らないではない。
左側から見たアングルでは、 変圧器の上の方に丸いものが三つ並んでいるのが判るが、 これらは見たところ避雷器の底にそっくりである。 どうやら変圧器の筺体の中に 避雷器を内蔵してしまっているようだ。

これが「灯動共用三相 4 線式」の変圧器かも知れない。 二つ書かれた数字も、 それぞれ動力用と電灯用の定格容量だと考えると 納得がいく。 しかし、 ケーブルの太さがどうしてこうも違うのか、 今一つ良く判らない。 また、 接地されているケーブルも、 本当に白っぽく見える線なのか、 判然としない。 二次側が架空線路だったら もっと良く判っただろうに、 非常に残念である。

追記: とある電機メーカーにお勤めの方から情報を頂いた。
この柱上変圧器は『都市形柱上変圧器』と呼ばれるもので、 その方の身近の同等製品では重さは 900 キロ近いものだそうだ。 内部に動力専用の 50 kVA と電灯動力共用の 125 kVA の二つの変圧器が内蔵された、 異容量 V 結線の 灯動共用三相 4 線式の柱上変圧器なのだそうだ。 このうち 電灯動力共用の 125 kVA 変圧器からは センター・タップが出ていて、 この中性線を接地して単相 3 線式の電灯需要を賄っている。 (「電気設備の技術基準の解釈」という 電気設備のルール集みたいなものの 第162条2項で、 住宅の屋内電路の対地電圧は 150V 以下でなければならない旨が規定されているので、 一般には電灯線の中性線を接地することになるのだそうだ。)
次に容量的な考察をする。 この柱上変圧器を電灯需要だけで使おうとすれば その容量は 125 kVA になり、 その時には動力用の変圧器は死蔵されることになる。 一方、動力を容量ギリギリ一杯まで使おうと考えることとすると、 125 kVA の変圧器を頭の中で 75 kVA と 50 kVA の変圧器ふたつに分割したと考えて、 二台の 50 kVA の変圧器を V 結線して作った三相変圧器と 75 kVA の単相変圧器とのセットがあると思いこむことができる。 この時、動力側の三相 V 結線変圧器の容量は 50 × ( 3 の平方根 ) で約 87 kVA となって、 もう一方の電灯側の変圧器の方は容量 75 kVA ということになり、 変圧器の能力は 100% フルに利用される計算だ。 表示された二つの数字は、 内蔵された二つのトランスの容量であって、 V 結線された結果として構成される動力と電灯の容量ではなかった訳だ。
また、電灯線の中性線兼接地線の太さに関する疑問に付いては、 単相 3 線の負荷が中性線の両側に理想的に配分されていれば 中性線を介して変圧器に出入りする電流は理論的には零になる筈なので、 両端の線に流れる電流の半分程度を想定しているのではないだろうか、 とのことであった。 さらに、 低圧配電線が短絡した場合には 接地線にもかなりの電流が流れる可能性があるはずであるが、 こういった事故の場合には数秒間程度耐えられれば充分であるから、 このくらいの太さでも良いと割り切っているのであろう、 ということである。 ちなみに定格電流は 電灯動力共用の 2 本の線が約 600 A, 動力専用の線が約 240 A で、 電線としては 断面積が 325mm2 のものと 断面積が 100mm2 のものとを 2 本ずつ使う。
最後に、私が避雷器と見たものは、実は高圧カットアウトなのだそうだ。 確かにこちらの方が柱上変圧器に縁深い。 なるほど。

そういえば、 上の写真にも写っているが、 変圧器の下に取り付けられている 低圧電力ケーブルの接続箱がなかなか面白い。 上には変圧器の出力を接続するコネクタがあり、 その配置は電柱から遠い方から順に黒赤白青で、 千鳥配列になっている様だ。 両側面には メッセンジャ・ワイヤを使って 低圧電力ケーブルを 隣接する電柱に引き回すためと思しきコネクタが 両面にそれぞれ 4 つあり、 底面には地下へ引き下ろすためと思しき コネクタがある。 いうなれば 低圧電力ケーブルを使った装柱用の 万能接続箱といったところだ。 是非手にとって見てみたいものである。 これ一つだけでも色々な事が判るのではないだろうか。

追記: JAMMIT 氏によれば、 この接続箱は『低圧分岐箱』と呼び、 3 相 4 線式の配電を行なうためのコネクターが入っているそうだ。 調達品リストには『低圧架空ケーブル用分岐箱』の名称で記載されているのがそれだろう。 底面にはコネクタ 4 つで 1 セットの口が 1 セット、 または 3 セット備えられている。 ケーブルに付けられた色マークは 黒 (U), 赤 (V), 白 (W), 緑 (N) となっていて、 このうち 黒, 赤, 緑の 3 本で低圧電灯線の単相 3 線 200 ボルトを、 黒, 赤, 白の 3 本で低圧動力線の 3 相 3 線 200 ボルトを供給する。 緑マークの線は接地線、 白マークの線は中性線と呼ぶそうで、 緑色の線は接地する、という大原則は守られているようだ。 その反面、白マークの線が何故中性線と呼ばれるのか、 私には良く判らない。
この方式の配電には SHVVQ という型の電線を使うが、 この線は見た目はグレーであっても、中に色付の OW 線が入っているそうだ。 黒と赤の線は断面積が 150mm2、 白と緑の線は断面積が 100mm2のものを使う。 これが生粋の OW 線なら、 太い方でおよそ 380 A, 細い方で 300 A 程度を流せる太さになるが、 SHVVQ では被覆が厚くなっている分だけ放熱が悪くなっている理屈なので、 先に挙げた数字よりは許容電流量が少なくなっているはずだ。

調達品リストには、 数は少ないが 『都市形柱上変圧器 125+50 kVA』というのがある。 数字的に合うのはこれだろうか。 もっと数は少ないが 『コンパクト変圧器 20+50 kVA』とか 『コンパクト変圧器 30+80 kVA』というのもある。 動力専用の変圧器と電灯動力共用の変圧器との どちらの容量を先に書くのか、 ルールは無いのだろうか。 また、 出力は 4 本か 5 本か興味ある所だ。
また、名前だけなら 『 3 相 4 線式耐雷型変圧器 』 で 『 10+30 kVA 』, 『 15+50 kVA 』, 『 20+75 kVA 』 もリストされている。 これも柱上変圧器なのだろうが、 実際に電柱に付いている所と、 その周りの低圧配電線がどうなっているのかを見てみたいものだ。


低圧配電線の電線

ついでに低圧配電線はどのくらいの太さの電線を使っているか調べてみた。 まず電線の種類は OW (屋外用ビニル絶縁) 電線であると断定して、 調達品リストを見てみる。
すると銅導体では 60 mm2 (平方ミリメートル) のものが 1332 km 必要、 と書いてある。 また、ACSR-OW 電線では 32mm2 のものが 3300 km, 120 mm2 のものが 9000 km, ACSR/AC-OW 電線でも 32 mm2 のものが 270 km, 120 mm2 のものが 1900 km だ。
こうなってくると、 電線は銅でできているものだ という考えは捨てなければいけないようだ。 今時の電線はアルミ製なのである。 青い被覆の電線の方がポピュラーなのだ。
OW 銅線の許容電流は、断面積 60 mm2 で 220 A 前後である。 また、ACSR-OW 電線の断面積 120 mm2 は、 アルミの電気伝導率が銅の 60 % ということから、 銅の断面積 60 mm2 の場合に少し「+α」した程度だろう。 だから、変圧器から流れ出してくる 250 A という電流は、 低圧配電線が受け入れられるぎりぎりの所かな、とも考えた。
しかし、柱上変圧器に 100 kVA の型もあった事も考えあわせると、不安だ。 右と左に別れて流れていくから、大丈夫なのだろうか。


さて、この柱上変圧器や開閉器、そしてあの『低圧分岐箱』、 一度バラしてみたいものだが、どこかに落ちていたりしないのだろうか…。 まぁ、贅沢は言わない。 図面だけでも良いから、見てみたいものである。


未解決問題

  1. 今まで恥ずかしくて誰にも聞けなかった疑問: 『電線』と『ケーブル』、言葉として使い分けられているが、 どういう定義の差があるのだろうか…。

    電線やケーブルの断面をみると、 中心に導体があり、その周囲に絶縁層がある。 この部分を外部から保護するため、あるいは張力に耐えられるようにするために、 絶縁層のさらに外周に保護層を設ける場合がある。 この保護層 (『シース』と呼ぶ) があるものをケーブルと呼び、 それがないものを電線と呼ぶそうだ。
    そこで、次なる疑問: 電気絶縁にも、機械的保護にも使える all mighty な材料が開発されて、 保護層を一層だけで済ませることができるようになったら、 その線は『電線』なのか『ケーブル』なのか。 興味深い。

  2. 低圧配電線路の配線は、結局 4 本と 5 本のどちらが主流なのだろうか。

    JAMMIT 氏によれば、 市街地などの電力需要が大きいところでは 5 線式、 そうでない地域では 4 線式を採用しているのだそうだ。 一般に日本では 3 相 4 線式の方が多いのだが、 これは大容量の配電には向かないので、 このような使い分けになっているとのこと。

    しかし、何故 3 相 4 線式は大容量の配電には向かないのか、は今だに勉強中。 まだ漠然とであるが、 負荷電流が (5 線式より) 多くなる、 相間での負荷のバランスをとるのが難しい、 なんていうのが理由ではないかと思うのだが…。

    何人かの方からお話を伺った範囲での現時点での暫定的な考え:
    3 相 4 線式では四本の線に流れる電流量がかなり違う。 たとえば『都市形柱上変圧器』では、 三相交流側の電線三本に定格電流で 600A と 240A の差があるので、 ちょっと遠くまで電気を運ばなければならないときは 各線で電圧降下が電流量に比例して起こることになり、 三相交流の線間電圧にそれなりのバラツキが出てしまいそうだ。 また、誘導電動機を始動したりするなら最初に結構な突入電流が流れる筈で、 その時には単相側に結構な電圧変動が押し寄せることにもなるだろう。 一方の 3 相 5 線式であれば、 三相交流側の三本と共用しているのは単相側の中性線なので、 この線に流れる単相側の電流は理想的には零になるから、 三相と単相とを問わず、 それぞれの中での負荷のバランスが取れているならば、 それらを重ね合わせても電圧バランスは崩れない理屈になる。 だから、電流がたくさん流れる地域では、 3 相 5 線式の方が重宝するということになるのではなかろうか。
    また少し異なった視点から、 ちょっと極端な例として、 畑の真ん中に裸電球と井戸ポンプがポツンとある光景を想定する。 これらを動かすためには電灯用のトランスと動力用のトランスが必要になる。 これを 3 相 4 線式で動かすならトランス 2 台ですむが、 もしも 3 相 5 線式でやることとするならトランスが 3 台必要になり、 通常は一本の電柱にはトランスを 2 台までしか釣らないので、 これに従うなら 2 本の電柱と引き通す電線も必要になってしまう。 これは、コストパフォーマンス的にあまりうれしくないことだろうから、 需要が多くはなさそうなところでは 3 相 4 線式がお得な気がする。
    また、同様に、ある需要家が電灯と動力の双方を利用している場合、 近辺の電柱の工事をしたときにはその需要家の電灯と動力のどちらかだけが停電すると言ったことが起こりうる。 この様な状況は電源の充電状態が需要家にも工事者にもよく判らなくなるので、 3 相 5 線式はあまり安全とは思えなくて出来れば使いたくないものだという人もいるようだ。
    なお、 『余程の繁華街でもない限り 3 相 5 線式を使っているのは東京電力ぐらいのものではないのか』 というご指摘もある。 私にはあまり心当たりがないのだが、 皆様のお近くでは如何だろうか。 今後は、 地方都市に出張したときなど、 ちょっと注意してみて見ることにしたい。


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