高圧配電線の追跡


わが家に至る高圧配電線を追跡してみた。 ただ単に、 地中フィーダケーブルの需要家側の端がどのようになっているのかを 見てみたかったのである。
普段運動不足の体には良い刺激になったのかどうか…。


スターティングポイント

ここが、わが家のある住宅地の入り口である。

幹線からの引き込みの所には、 ちゃんと高圧開閉器が守りを固めている。 配電線搬送用の高圧結合器が見当たらないので、 何かあった場合には誰かがここまで車を飛ばして来て、 必要な操作をする必要があることになる。
ここから住宅地の末端 (変電所と反対側) までの間には 高圧開閉器がひとつだけある。 これが、停電するときにはご一緒するグループとなる。


高圧開閉器のひとつ末端側の電柱には、 ちょっとずんぐりした変流器内蔵碍子と、 異常電流の通過表示器と思しきもの (低圧電灯線の下に斜めに取りつけられたグレーの円筒形のもの) とが設備されている。

そしてこちらが、 わが家から見てもっとも末端の高圧配電線である、 わが家が使う電気を 210 V まで落としてくれている柱上変圧器。 系統の末端部に位置するため、高圧配電線のうち一本が省略されてしまっている。

十数軒をこの 50 kVA の変圧器一台で賄っているのだが、 本当にこれで容量が足りているのか、 はなはだ不安である。 何しろ、わが家の契約だけでも 9 kVA なのだ。
となりのスパンは殆んど同じ軒数をサービスするのに、 50 kVA の変圧器を二台使っている。 取りつけるのを忘れているのではあるまいか。


追跡にあたって着目したもの

電柱にはいろいろなプレートが取りつけられている。

この金色の大きなプレートには、 その電柱に装置されている高圧開閉器が通常は開放されているものであることと、 両側の高圧配電系統は何線と何線であるかが明記されている。
もし万一、 配電線路の異常で配電系統の末端まで電力を送れなくなった場合には、 これらの開閉器を投入して隣接する配電系統から給電する事になるのだろう。
ついでに、 配電系統を追い掛けるような暇人にも、 貴重な情報を提供してくれることになる。


二段重ねの高圧配電線

高圧配電線を追い掛けていくと、 途中で高圧配電線が二段重ねになる。 電柱を眺めはじめた頃には、 事故に影響される区間を狭めるためだと思っていたものが、 今回はじめて、 実は配電系統の境界近傍だったことが判った。
まぁ、 配電用変電所のサービスエリアをいくつかの配電系統に区分し、 さらにそれらの間を常時開放の開閉器で繋いでおくことの目的は、 『事故に影響される区間を狭める』ことにあるので、 あながち大間違いという訳ではないのかも知れない。

電柱 A

下の写真に示す電柱には金色のプレートはない。 ということはこの高圧開閉器は常時投入であり、 上下段の高圧配電線は 同じ系統に属しているということになる。 ちなみに、 この配電系統はわが家が属している系統であり、 物理的には上段の高圧配電線に接続されている。

電柱 B

このすぐ左側 (変電所側) の電柱は下の写真のように、 上段の高圧配電線が高圧開閉器で区分されている。 ここにも金色のプレートはないので、 常時投入であると考えられる。

電柱 C

そして、そのもうひとつ変電所側の電柱では、 下の写真のように下段の高圧配電線が高圧開閉器で区分されている。

実はこの電柱には、 うまく写真が撮れなかったのだが、 常時開放と書かれた金色のプレートが付いていた。 すなわち、 この電柱は配電系統の境界だったのである。
上段の高圧配電線は区分されていないので、 ここより変電所側では、 上下段の高圧配電線が異なった配電系統に属すことになる。

電柱 D

ここよりさらに数本変電所側の電柱には、 下のように上下段の高圧配電線を接続するように開閉器が付いている。

当然、この電柱に付いている金色のプレートは 上下段が違う系統であることと、 開閉器が常時は開放されていることとを示している。

まとめ

これらのことをまとめて、この一群の電柱によって実現される機能を考えると、 以下のようになるだろう。

こんなことを考え合わせると、 上下二段に施設された二つの独立した配電系統は、 互いに互いを補いあう機能を持つように計画されているのだろう。

ついでに、 この付近の電柱の腕金は、 こんな配電線の事情に合わせて、 縦長の F 字型になっている。 この腕金では上下の配電線間の距離も充分に取られており、 電柱よりの所には高圧開閉器を納めるのには充分なくらいのスペースも空いている。

蛇足ながら、ここから立ち上がり電柱まで、 上段の高圧配電線に接続される負荷はひとつもない。 いや、 これは蛇足なんかじゃなく、 凄く重要なことなんじゃないだろうか。 今まで何となく、 フィーダ区間とは地下ケーブル区間のことのような気がしていたのだけれど、 上段の高圧配電線にとっては、 下段の高圧配電線に接続される電柱 A までがフィーダ区間なのだ。


辿り着いた立ち上がり電柱

約一時間の追跡の後に辿り着いた立ち上がり電柱がここ。 さっきの一群の電柱からはフィーダ区間であるから、 途中には分岐などもなく、 ほとんど迷うこともなく見つけることができた。 この高圧配電線の上段に設備されているものが、 わが家に至る高圧配電線である。

実はこの電柱は、 配電用変電所である百合ヶ丘変電所の門の一番近くにある電柱であった。

思わず近寄って見てみる…。

なぜか腕金がぴかぴか輝いている。 柱上変圧器も高圧開閉器のラーメンカップもつやつやしている。 この電柱は建てたばかりなのであろうか。
でも、 そんな工事をのんびり時間を掛けてやられたら、 そのあいだは末端の需要家は停電しかねない。 (その中には当然わが家も含まれることになる。) 最近停電した記憶はないし、 工事中は一体どうしていたのだろうか。

さて、装柱された部品を見てみると、 高圧開閉器は非常に小さくてコンパクトな印象を与える。 また、配電線搬送用の高圧結合器もついている。
柱上変圧器への引き下げ線はケーブルを使っているし、 引き込みに使っている碍子はスマートな 『スリップオン碍子』 になっている。 ケーブルの取り回しも何となく綺麗な印象をあたえる。

しかし、 この立ち上がり電柱には 何となく違和感を持ってしまった。 しばらく考えて、その原因が判った。 そう、この電柱に変圧器が二台付いているのである。
今まで見てきた自動開閉器の付いた電柱には、 開閉器の電源用に 10 kVA くらいの小ぶりの変圧器が付いていたが、 いずれも一台だけで、単相の電灯用の変圧器だった。 ところがこの電柱には変圧器が二つある。 すなおに解釈すると 三相の動力用変圧器ということになるのだ。

開閉器の電源用でないとすると、なんだろう。 もし万一、 この変圧器に問題が生じて配電線に被害を与えたら、 ここから先の系統は、バイパスを使わない限り全部止まってしまう。 だから、この電柱から配電地域までの区間の配電線からは、 負荷を取らないほうが安全だ。 それがフィーダー区間という言葉の意味でもある。
そしてその唯一の例外は、 配電系統内の自動開閉器の電源である。 もしも他の配電系統から開閉器の電源を取ったら、 電源を供給する系統がトラブルを起こしたときに 巻き添えをくって異常動作をする可能性があるからだ。 この目的から一般化するなら、 自分の配電系統の機能を維持するために必要な負荷であるなら、 フィーダ区間であっても電力を取り出しても良い、 ということになる。

では、一体この電柱ではどうなっているのだろう。
写真のプリントを注意深く見てみると、 左側の柱上変圧器は高圧開閉器の立ち上がりケーブル側から、 右側の変圧器は開閉器の架空配電線側から、 それぞれ取り出されているようだ。 また、 その接続のしかたも、 一番道路側と一番建物側の、 両端の二相から同様に引き出しているように見える。
こうなってくると決定的である。 この二台の柱上変圧器は V 接続で三相変圧器を構成しているのではないのだ。 開閉器の両側での何か (電圧とか位相とか) を比較したりでもしているのだろうか。 その「何か」って何だろう。
あるいは、 ただ単に、 どちらからでも電源を取れるようにしているだけなのか。


すぐ隣も立ち上がり電柱、そして…

すぐ隣の電柱も立ち上がり電柱だった。

ちょっと疲れてはいたけれど、 せっかくすぐ傍にあることでもあるし、 じっくり見ておいて損のある筈もないので、 心の中でコストパフォーマンスを計算しながら、 しっかりじろじろと見物させて頂く。

これもまた綺麗な、 建てられてから間もないように見える電柱だ。 天辺には二組の高圧配電線が走っている。 この二つの配電線は異なった配電系統に属していることになる。
すぐ上を別の高圧配電線が走っているためか、 自動開閉器の高圧結合器が開閉器本体の下側に取りつけられているので、 その姿も配線も珍しく良く見える。 また、 問題の柱上変圧器は、 ここではひとつだけだ。

そういえばここに辿り着く少し手前に、 ここで上下に並んでいる二つの配電系統を ブリッジするような開閉器があった。

異なった系統なのだから常時開放なのは当然であるが、 こんなに変電所に近い所にあるとはどういうことか。 フィーダー区間に分岐などを付けたら、 フィーダーとしての役割はどうなってしまうのか。
察するに、 地中フィーダー区間 (と言ってもほんの十数メートルしかないが) にトラブルがあったときには、 この開閉器を投入して 二本のフィーダーのうちの生きている方だけで 二つの配電系統を賄うことにするのだろう。
立ち上がり電柱を工事している間だって、 この開閉器が活躍していたのかも知れないのだ。


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